2011-01-23

105 Radio Ga Ga

「ラジオは家庭に入り込む」(クレイグ・ライス著『死体は散歩する』)

1930年代の米国、テレビよりラジオが主流の時代だからこの言い方になるのだろうと思っていました。でもラジオを聴いていてふと気づきました。テレビが主流になっても、テレビは入ってこない。ラジオは入ってくる。

それは、テレビには画面があるから。何だ当たり前のことをと言うなかれ。テレビで喋る人は、それがどこだろうと画面の中に居場所があります。彼らは、どこかよその場所で喋っている誰かです。が、ラジオで喋る人の場所はどこにもなく、声だけです。目に見える姿がないから、彼らは「どこかよその場所の誰か」ではなくなります。自分のそばに来て、すぐかたわらで喋っている声なのです。

はるか遠くの人やものに居ながらに接近できるのがテレビの魅力だとすると、ラジオは、どんな遠くの音も誰の声もすべて自分のかたわらで起きているように聴かせる力があります。ラジオは「家に入り込む」のです。

入り込んでも、その場を支配しないのがラジオのいいところです。新年のカウントダウンに集まったとき、よそのカウントダウンを伝えるテレビを眺めて数字を唱えてもつまらないでしょう。でもラジオなら、他の人の声を聞きながら自分は主役のままでいられます。親しい距離にいるのにうるさくない、いわば理想の友人といったところでしょうか。

"Radio, someone still loves you" ("Radio Ga Ga" Queen, 1984)

No comments:

Post a Comment