2012-06-27

243 Hat

帽子好きで、特にフェドーラをいくつか愛用しています。20世紀半ば頃まで都市の大人が仕事に向かうとき、外出するとき、夏も冬も当然のように帽子を被っていたものですが、いったいいつどうしてそれが廃れてしまったのか不思議に思います。職業として帽子が必要なシーンは昔と変わらないのに(スポーツ選手や、船員や、シェフ、軍人、カウボーイまで)、普通の人々の普段着だった帽子がなくなったのは何故なのでしょう。


帽子は、靴に負けず劣らず実用的な機能を備えた身支度です。しかも靴よりもはるかに人目をひく位置で、それぞれお好みの構築的な形で自分の顔を縁どることができます。人は人の顔の辺りを見るものですが、帽子がその顔を形作り、彩り、目立たせているのは、動物がたてがみやとさかで個体を目立たせているのと何だか似ています。


もちろんまったく逆に、帽子を目深に被って表情を隠すこともできれば、帽子の鍔にちょっと手をかければ挨拶にもなるというコミュニケーションツールでもあるわけです(靴にはちょっと真似のできない技です)


現代は帽子を被らなくなることで、何か旧来の制約を外れ、決まりごとから自由になったのかもしれません。確かに男女を問わずヘアスタイルは自由になりました。しかしそのくらいではないでしょうか。帽子には、粋でクールな表情と、礼儀と節制の象徴という、相反する、得難い魅力が依然として備わっています。

2012-06-24

242 Fractal

I actually thought about writing about a scene that attracted me the other day--- a sight of a well-dressed set of shoes and man's feet on them seen behind and below the almost closed shutter door at an entrance of a prominent hotel. I was hit by the idea of how intriguing it was to see someone behind the closing shutter. But I lost my chance to shoot it.

So instead, I'd like to post a photo. It might remind you of the natural fractal patterns of the leaves and trees, if you feel this looks like a forest.

2012-06-17

241 Miss the Sky


Couple of months have passed since I last flew. I don't take the airplane so frequently, and it doesn't mean I rarely fly. But actually I do like flying and miss the sky from time to time especially when I'm sick of daily life. I don't know why so many other people don't feel as I do. In my opinion flying is the most amazing experience in our normal life. You will see the infinite space and become part of it. You're not just floating in the clouds, but you have destination where you find a different land and different people, and changes, that would change you. What is wonderful behind this is that all these flying experiences are made up of beautiful management of human skills and technologies from pilots to ground crew. Perhaps this is the reason for the tense atmosphere around the airport and during the flight, and it is making the air travel special.

2012-06-10

240 Diamond Jubilee

Even if you're not interested in British Monarchy, and no matter how ignorant you may be of Her Majesty's 60-years reign, The Queen's Diamond Jubilee is taking place and never fails to attract us simply because it is something great. It keeps reminding me of my first time overseas trip to London in 1999. 
So here are my discoveries of "greats" there that I would like to humbly share as a little celebration to the country.
-In London tube, everything from the train, platform, stairs and escalators are actually tube.
-Tubes are so fast that you'd clash with other passengers unless you take a good hold of the handrail.
-From London to Dover there's a beautiful pastoral landscape which looks like a golf course.
-London taxi is so huge, and thanks to the high seat you could look out over the street.
-Tower Bridge is so huge and so high. The Palace of Westminster is even more, and is overwhelmingly pointed everywhere.
-In every street you could sense their love for chairs and furniture. Every homes seem to be proud of interior design and styling.
-British Museum is huge. It’s great because some of the most valuable and curious things are placed so casually.
-People in London are so diverse.
-Sartorial taste, especially in suits, is splendid.
-Sandwiches are so nice. I have turkey sandwich at lunch and have avocado sandwich at dinner. I'd be delighted to have sandwiches at every meal.
-City of London is cool.
-Canary wharf is stylish.
-And the sunset on River Thames is just superb. 

239 Descendants


訪れたことがないのにそこがあまりにも有名なため固有のイメージを持ってしまった街や国というのがあります。ハワイはそのひとつです。ビーチと海、火山、レイ、日光と自然、ヤシの木、アロハのハワイ。単純すぎるイメージです。
G・クルーニーの新作「Descendants」はハワイに暮らす普通の人々の家族の問題を描き、ハワイの絵葉書的イメージを静かに穏やかに覆す趣があります。煌びやかに輝く海ではなく、曇り空の湿っぽい住宅街と、アメリカのどこのティーンともさほど変わらないうんざりするような子供たちと、アメリカのどこの都市とも全く変わらない平凡な病院を行き来しながら、主人公は悲しみに暮れる暇もなく、右往左往しながら、しかしいつの間にか着実に人生を建て直していきます。
洗練された大都市でクールに生きるのとは違い、大勢の親族や知人に囲まれて島で暮らす、それがたとえハワイのような自由で開放的な楽園であっても、その小さな世界に時に息が詰まるような思いをせざるを得ない苦悩は言葉にしなくても伝わってきます。
しかしやはり、ハワイには宝があるようです。怒りも、悲しみも、苛立ちも、悠然とした景色の中ではどこか穏やかで静かなのです。大都市を舞台に描かれる賑々しいエキセントリックなドラマはありません。そして主人公の心の変化と歩調を合わせるように、映画は徐々に素朴で美しいハワイの自然を映し出していきます。ラストシーンでは、それまでで最も美しく、澄み切った透明な海の上で、最も静かで穏やかな「終わり」が告げられます。冒頭からこのストーリーをたどり、主人公と一緒に小さな冒険と旅を繰り広げてみれば、ハワイはそれまでのイメージとは全く異なる清々しい磁力を放つ島になっていました。

2012-06-04

238 Midnight in Paris

ウディ・アレン監督の新作にして最高のヒット作、"Midnight in Paris"はおそらく今まででもっともSF風でないタイム・トラベル・ストーリーです。現代のパリにいながら過去への強い憧れを持つ米国人の作家がある真夜中に1920年代のパリへと迷い込み、ゴールデン・エイジの芸術家や作家たちと語り、一緒に出歩くようになります。可笑しいのは、朝になる前にどこかでちゃんとスイッチが切れ、彼は難なく現代に戻っているのです(普通のタイム・トラベルは、もと来た時代に戻るのに苦心するというのに)。現代の閉塞感を抜け出すように彼は過去との出会いに味をしめ、夜毎にヘミングウェイやダリやフィッツジェラルド夫妻と酔狂で知的な会話を繰り広げていきます。


この映画が魅力的なのは、単純に過去の偉人たちを眺めているのではなく、彼らがあたかも今の時間を自由にリアルに生きているかのように描写している点です。本来現代の我々は彼らの黄金期を知り、またその後についてもよく知っています。でもこの主人公には現代から見た過去の視点はなく、ただ二つの並行した舞台を往来するように2010年と1920年代をあちこち歩き回ります。へミングウェイがこんな人だった、という描き方ではなく、誰も知らないヘミングウェイという人物がふいに登場してくるようです。時空を超えて主人公がどこかに旅するのではなく、むしろ「ジュラシック・パーク」のように、ありえないはずの恐竜が生きて目の前に現れた、という感覚に近いのです。


だから、ここでの過去は「終わってしまった、完了した、既知の」過去ではなく、「存在していたことは知っていたけれど、初めて見た」過去です。しかしこれだけ贅沢に芸術家たちを登場させておいて、最後に「やっぱり現代に生きるのが一番」と主人公に言わせてしまうのも潔く、愉快です。


もうひとつ面白いのは服装。主人公は2010年のスーツ姿でジャズ・エイジに遊んでも、果てはベル・エポックに迷い込んでもあまり違和感ないのに対して、彼が1920年代で出会った女性のフラッパー風ドレスは19世紀末の優雅なパリでは「おそろしく前衛的な服」と言われてしまいます。女性の服装が時代につれて変わりすぎるのか、それとも男性の服装があまりにも変化がないのか、過去の偉大なるデザイナーたちに訊いてみたい気がします。