2010-08-18

76 Review on Review

Cloudberry Jam "Providing the Atmosphere" (1996)
10年以上前に自分が書いたこのCDのレビューが、今もあるサイトに掲載されています。一生懸命誉め言葉をつなげただけの自制のないレビューに見えますが、その無邪気さがなかなか面白い発見でした

スウェーデンのグループの中では知名度はほどほど,とはいえこのクラウドベリージャムは音楽性の高さ,センスの良さは抜群で,フレッシュさとのびやかさがありながら同時に大人の鑑賞に耐える確かな力量を持っている。 」

大人の鑑賞という年齢に達していたかどうかはさておき。どこかで聞いたような文句を並べているのはさておき。本当にこう思っていたのだから仕方ない。

「2作目のアルバム『雰囲気づくり』は文句無しにおすすめ!ボサノバやジャズ,ギターポップにヒップホップまで,お洒落な音をほどよく取り入れ,しっかりしたボーカルとハーモニーが心地よい。ボーカルのジェニーの声は低めで,リラックスした澄んだ声で聴きやすい。どの曲もいかにも北欧らしいシンプルでキャッチーなメロディが楽しく,つくりこみすぎない印象が新鮮で,何度でも聴ける。すべて英語による歌詞は,日常的なフィーリングや思想や気持ちをすんなりと表現していて,さりげなく知的。」

実にふるっている。ここまで熱心に曲をすすめられたら聴いてみたくなる。音、声、楽曲、歌詞まで全てを誉めたい一心で、ずいぶんがんばって言葉を探してきたのが偉い。我ながら。 

タイトル通り,いい雰囲気のBGMとして楽しめるが,ただ単に「なごみ」だとか「癒し」だとかいうレベルではなく,ていねいに作られたセンスのよい音楽の幸福感がありのままに伝わってくる。」

「ていねいに作られたセンスのよい音楽の幸福感」という意味不明なものが、「ありのままに伝わってくる」のはすごい。何が伝わってたのか。でも本当にこう言うしかないものがあったのだから。

結局今でも、この作品への評価はこの言葉と全く変わらないのです。

批評精神は絶好調だったようで、ジャック・タチの『ぼくの伯父さんの休暇』には

ひと一倍大きな身体と長い手足を持て余すかのようなユロ氏。彼がいるだけで,とりあえず何か騒動が起こってしまう避暑地の日々。何を起こしても,何が起こっても,ユロ氏はどこまでも気ままにのんびりと,しかし楽しむことには好奇心旺盛。迷惑顔の回りの人だって,それなりにマイペースな海辺のひととき。それが,可笑しいのです。

監督(&主演)のジャック・タチは,せりふよりも集団のパフォーマンスと,妙にのどかなどたばたギャグで微妙な笑いを生み出します。その笑いはひっきりなしで休む間もないけれど,押し付けがましくはない淡々とした笑い。ジャック・タチの映画が唯一無二の個性をもつことを,納得できます。 」

UKロックのblur "Think Tank"には

「大人っぽく,一段とヨーロッパ的に,しかも中近東の音色を入れつつ,ときにすごくいいメロディを聴かせてくれます。自在に変化する才覚と,抜群のセンスの良さ,というblur音楽の魅力をまた実感。 」

マイク・ロイコのコラムには

「読み出したら最後まで止まらないこのコラムの魅力は,アメリカ社会に対する厳しい批判精神を核としていながら,それをきわめて上質の,威勢のよいユーモアによって愉快に描き出すことにある。まるで江戸ッ子の啖呵を思わせるような冴えた面白さは,時代を経てもまったく変わらない。」

Harry Potterの一作目には

「ひとつひとつのセリフ,情景描写,心理描写,笑いとホラーが混在するセンスにわくわくしてしまい,辞書を引くのも面倒なほどです(少しくらい分からない単語があっても気にせずに読めます。というより続きが気になって仕方がないので,辞書で中断するのが惜しいくらいなのです)。 」

コルビュジエ建築本には

「各建築家の講演を記録したものなので,すべて話し言葉で書かれている。そのため,内容が難しい部分でも比較的読みやすく,論点についてじっくり考えることができる。 コルビュジエに対する建築論のアプローチは,今なお多様であることがもっとも強く印象に残る。」

これらは批評でもなんでもなく、ただ好きなものを真剣に書いただけなのです。だから稚拙きわまりなく偉そうなこれらの文章は、音楽や映画や本の記録ではなく、自分の感覚の記録だから面白いのです。(ついでながら、北欧ポップスもユロ氏もコルビュジエも、今でも大好きです)

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