”侵略戦争後の荒廃した地球に一人残された男、その予期せぬ真実とは”―使い古された感のあるSF映画の設定でありながら、予想を裏切るプロットと完成度の高さ、クールな近未来SFのクオリティを、"Oblivion"で楽しむことができます。
何を置いても、ビジュアルとプロダクションデザインの美しさには驚きました。正直なところSF映画の大半の楽しみはここに懸かっていると個人的には思うところです。そこまでは言わずとも、SF映画のビジュアルに少なくとも想像性と説得力が見られなければ、いずれにせよ荒唐無稽な設定の映画の世界に入ることなどできないでしょう。
監督のJoseph Kosinkiはスタンフォード大学機械工学デザイン科を卒業後、コロンビア大学建築大学院で修士課程を修め、建築からNike、Appleなどの映像クリエイター、そして映画監督へと転じた経歴の持ち主で、アカデミックな背景と先端的な美意識がこの映画にも満ち溢れています。雲の上の近未来モダンな住居から、球形が巧みに活かされた小型のジェット機、スマートフォンをテーブルにしたような司令塔システムまで、美しく、リアリティのある造形が徹底しています。その一方で、地上の景色や動植物の静かで自然な美しさを魅せる場面が交差し、一体どちらがフェイクなのか?と問いかけられるようです。
ビジュアルだけではなく、展開の特殊さも際立っています。舞台設定は大掛かりであるのに、主要な登場人物は僅かで、説明も少ないのです。真実が明かされた後も、物語の多くは観客の想像力に委ねられています。ストーリーは多少強引なところはあるものの、非常に余韻を残すものです。
監督自身も影響を受けているらしく、この映画は「2001年宇宙の旅」、特にHALのイメージに類似した部分があると言われていますが、全体の感じはむしろピクサーによる「WALL-E」を思い出させます。久しぶりにSFらしいSFを満喫しました。
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