お話はL.A.の高級フレンチレストランで気鋭のシェフを務めていたカールが評論家とオーナーとの衝突でクビになり、離婚した妻と息子とともにマイアミに戻ったときにキューバ料理に魅せられ、心機一転フードトラックを始めるというもの。筋立てがシンプルな分、キャラクターの面白さ、セリフの妙、SNSを組み入れたプロット、心躍るような音楽、アメリカの街の風景、父と息子のドラマ、ロードムービーの高揚感など見所が際立ち、そして何よりも数々の料理の美味しそうなことと言ったら、「シェフもの」映画の中でも第一級です。整然とキッチンに並ぶ食材、上品に盛りつけられたフレンチのコースから、友達の家で手軽に作るパスタ、様々なソースに彩られたシェフ渾身の新メニュー、息子と市場巡りをしながら頬張るサンドイッチ、じっくり焼いたテキサス風バーベキューに、熱々の、黄金色のキューバサンドイッチ。それらの料理が、音楽と旅と一緒になって何とも言えない幸せな空気を運んできます。
美味しい料理というものは、必ず人を幸せにできるのかもしれません。美味しい料理がそこにあれば、人はとてもシンプルな喜びを感じます。この映画は登場人物のほとんどが善良でシンプルな人間で、敵対するオーナーや評論家も悪い人間なのではなく、ビジネスやポリシーなどそれなりの理由を持ってシェフを批判する側というだけのことです。この話は出来すぎかもしれませんが、美味しい料理も人生もあれこれ考えず楽しく味わうのが一番だという気持ちになります。
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