「大学の女性アカペラグループに渋々参加したクールなDJ娘が、伝統の殻に閉じこもったグループのカルチャーに反発しながらも次第に仲間を見出し、彼女の音楽の才を発揮して古くさいアカペラを革新する」…どこかで聞いたことのあるような筋立てで、現代の映画の脚本としてはいかにも新味はなさそうです。にもかかわらず"Pitch Pergfect"は、脚本こそひねりはないものの、音楽映画として、若者映画として、何よりおふざけ満載のコメディとして一級のエンターテインメントに仕上がっています。
人の声だけで演奏しているとはにわかに信じがたいレベルのアカペラ、それにダンスが加わり、映画の中のアカペラのステージはリズムとハーモニーとエネルギーが炸裂しています。ウィットと音楽性が試されるアカペラバトルに至っては、何百というストックから瞬時にぴったりな曲を選び出し、相手の演奏にかぶせるというまるで”人間DJブース"のような凄さ。そうした音楽のクオリティだけでも十分に楽しめるのに、この映画の愉しいところは音楽以上にバカバカしくシュールなコメディを中心に据えている点にあります。それもどこか力の抜けた、ちょっと醒めたようなオフビートな笑いで、それが主人公のクールで自然体な態度とよく調和しています。シンプルに笑い、音楽を楽しみ、クライマックスまで一気に快走できる痛快な映画です。
No comments:
Post a Comment