a scene from "Pride and Prejudice" 2005,
英国文学の名作と名高いJane Austenの「自負と偏見」を初めて読んだとき、小津安二郎の映画を思い出しました。19世紀の英国のジェントリと、20世紀の東京の市民生活がつながるのは、ある家族の娘の結婚を巡る(どちらかといえば他愛ない)物語という共通点です。どちらも、大した事件が起きるわけでもない日常の中で娘の結婚騒動にやきもきしながら、平穏な結末を迎えるというもの。話の本質はいわば"Boy meets girl" ―いや"Gentleman meets lady"―に過ぎないのであって、しかしどちらも巧みで、鋭く繊細な第一級の人間観察によってすぐれた物語になっているのは知られている通りです。
相続権のない娘たちが婿探しに躍起になる姿は滑稽ですが、それが将来を賭けた重大な仕事であれば真剣になるのも当然。彼女たちの羨望を集める荘園領主が専ら狩猟や社交や読書や芸事に時間を費やす(ように見える)貴族的な生活を送るのも、それが彼らのジェントリとしての仕事とあらば、いかに暇そうに見えても、なるほどその人生に対する真摯さは現代の仕事人と変わるところはないのかもしれません。
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