2012-04-08

223 Marilyn

"The Prince and the Showgirl"の撮影で英国で過ごすマリリン・モンローを描いた"My Week With Marilyn"。恋愛ものと宣伝されがちですが、見どころはマリリンがサー・ローレンス・オリヴィエを相手にいかに役者としてのこだわり(とわがまま)を見せたか、二人の俳優がどれほど対立したか、またオリヴィエが激昂しながらもマリリンの天性の演技をいかに尊敬したか、そして彼女がなぜ世界でもっとも魅力的で美しい女性だったのかが抑制されたテンションで語られ、主演二人の名演とともに記憶に残る映画となりました。

映画スターと演劇の名優はそれぞれ、マリリンはリアリズムを追って内面に入り込むメソッドアクト、オリヴィエは誇り高い演劇の伝統のもとに台本への忠実さを求めます。撮っている映画自体はいかにもお軽いコメディなのですが、演技へのアプローチをめぐる火花の散るような対立は真剣です。双方一歩も引かないプライドと価値観に、役者という仕事を垣間見ることができます。

ケネス・ブラナー演じるオリヴィエ、ミシェル・ウィリアムズ演じるマリリンは、幾多のレビュー通り非凡な素晴らしさですが、面白いのはその演技の普遍性です。つまり伝説の人物に似ているかではなく、これがマリリンとオリヴィエという特定の人間ではなくても、映画スターと名優の対立を描いたひとつのドラマとして見応えがあるという点です。マリリン・モンローというもっともハリウッド的な人物を扱いながらも、イギリス映画のような抑制が効いているからでしょうか。

この真摯で、純粋で、ユーモアに溢れ、挑戦的で、そして出会う誰もが息をのみ「美しい」と言うマリリンの姿が真実なら、彼女をイメージして書かれた「ティファニーで朝食を」を本当に演じていたなら、と思います。ヘプバーンが演じた役は粋の極みで実に素晴らしいのですが、マリリンが演じていたらおそらくもっとこの世のものならぬ魅力を与えていたでしょう(ただし原作と違う葛藤と悔恨を見せる映画版のラストは、きっとマリリンには似合わないことでしょう。)

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