429 The Band's Visit
2007年のイスラエル映画、"The Band's Visit"は説明のつかない魅力に溢れる作品です。ひとことで言えば、非常に美しい映画です。エジプトからイスラエルに来た警察の音楽隊が勘違いのために辺鄙な砂漠の田舎町で一夜を過ごすことになる、と一行で語れてしまうストーリーの中に、いやむしろストーリーの枠を超えたところに、ユーモアと味わい深さと淡々としたペーソスが綴られ、そして何より音楽隊の物語だけに、音楽が巧みに効果的に使われています。この映画では音楽は言語や国や文化を易々と越え共有できる、という意味も込められているようですが、それが別に奇蹟を起こすわけでも、大げさなハッピーエンドがあるわけでもなく、淡々としかし鮮やかに人間の心情を描き出すためにそこにあるという印象です。言葉のわからない土地で無言のまま音楽隊が奏でる伝統音楽、地元の若者が深夜に車を飛ばしながら掛けるクラブミュージック、そして世界中どこでも通じる「ビートルズ」や「ストーンズ」。そもそも音楽とは人間が作っているのですが、それにしても優れた音楽はカテゴリを問わず、まるで自然が作ってそこに置いておいてくれたもののように感じられます。
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