例えば人が荷物を持つとき、特に把手のついた鞄を持つようなとき、手の指すべてを握って掴むのが普通です。ところが古武術の考えに従えばこれは無駄な力をかけていることになるそうです。手指すべてを使う必要はなく、中指と薬指を丸めてそこに荷物を引っ掛け、あとは親指で支えるだけで、荷物を持つのに必要な力を発揮できるのだそうです。試してみれば確かにその通りです。重さを支える指を減らすことで一見よりヘビーな負荷がかかるように思えるのですが、主に中指で重さを受けて、薬指と親指を支えに添えている格好は、なぜかとても安定的で楽でさえあります。おそらくすべての指を不必要に握る形にするための力を無駄に使っていた分をリリースして、必要最小限の力を出すことができるからなのでしょう。
また、歩いて前に進むときに「足の力で蹴り出す」ことはもちろん必要ですが、それに加えて「体重移動と重力を利用する」ことで驚くほどスムーズに移動ができる感覚が得られます。
ブラジルにカボエイラという格闘技とダンスの中間のような身体技があります。攻撃にせよ防御にせよ運動にせよ表現にせよ、格闘家やダンサーを見ていると、人間の身体能力には限りない可能性があり、身体を知り身体をうまく使える知識と能力は、人という生物として何十年も生きる上で実は大変に重要で貴重なものだと感じます。
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