ブルックリンを舞台に、ノスタルジックでスモーキーな音楽とともに展開する姉弟、家族と、出会いと別れの物語。主題は恋愛かもしれませんが、ここでより重層的にリアルに語られるのは家族愛です。仲違いをして疎遠になったまま、ある日交通事故で昏睡状態に陥った弟。ストリートミュージシャンの弟の日々と音楽と記録と思考をひたすら辿りながら、弟を理解しようとする姉。不安定な姉と弟をつなぐ存在として、弟が尊敬していたミュージシャンが彼らの間にひとときの温かさと光を与えます。この映画の描写で何より印象に残るのは姉の黙々としたひたむきな看病です。弟に音楽を聴かせ、語りかけ、好きな食べ物を鼻に近づけ、手を擦ってみて、果てはまぶたを開けて目を開かせようとします。視覚、嗅覚、触覚、聴覚のすべてを動員して、途絶えた意識に働きかけようとする真剣さに素直に心打たれます。
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