2011-06-22

146 Z Coffee

東京・赤坂にお気に入りのカフェがありました。それほど足繁く通っていたわけではないのですが、赤坂に行くたびに立ち寄っていました。機会は多くないだけにむしろ記憶に残るお店でした。

木を多用した空間に吹き抜けの高い天井と、ロフトのような2F席が他店とは少し違う雰囲気でした。広々しているわけでもなく、狭くもなく、とりたてて美しいわけではなく、家具が素晴らしいわけでもなく、コーヒーはきわめて美味しく、静かで、気楽で、いい場所でした。コーヒー店にしては―というより、今やありとあらゆる公共空間において―珍しく、"Personal Space"を得られる店でした。

これには絶対的条件が2つあります。スタッフの存在感が押しつけがましくなく、いるのかいないのか分からないくらいであること。そして店の客がお互いに邪魔せず干渉しない空気を保てること。

Blogでもたびたび話に出している通り、Starbucksはむろん大好きですし、毎日行きますが、店舗のある場所と客層によって「雰囲気作り」の成否はだいぶ違うのは否めません。ある瞬間、その場にいるスタッフと店の客全員がある同じ感覚と気分で同時に場を「作る」、さらに言えば「演じる」ような瞬間があれば(幸運なことにたびたび遭遇するのですが)、そこで居心地のよいPersonal Spaceが得られます。

赤坂のお店は、この空気をいつでも味わえる場所でしたが、残念なことに先日閉店してしまいました。人によってPersonal Spaceを求めることもあれば、賑わいや喧騒をカフェに求める人もいるかもしれません。ただ、長年の経験から、カフェインは、人を「集団」より「個」の意識に向かわせる効果が強いと思います。

とはいえ、カフェの良しあしにこんな理屈を並べても始まりません。何を差し置いてもまずおいしいかどうか。雰囲気や空間はあとからついてきます。本当においしいコーヒーであれば路上で飲むのだって最高です。また開拓が始まります。

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