2012-06-27

243 Hat

帽子好きで、特にフェドーラをいくつか愛用しています。20世紀半ば頃まで都市の大人が仕事に向かうとき、外出するとき、夏も冬も当然のように帽子を被っていたものですが、いったいいつどうしてそれが廃れてしまったのか不思議に思います。職業として帽子が必要なシーンは昔と変わらないのに(スポーツ選手や、船員や、シェフ、軍人、カウボーイまで)、普通の人々の普段着だった帽子がなくなったのは何故なのでしょう。


帽子は、靴に負けず劣らず実用的な機能を備えた身支度です。しかも靴よりもはるかに人目をひく位置で、それぞれお好みの構築的な形で自分の顔を縁どることができます。人は人の顔の辺りを見るものですが、帽子がその顔を形作り、彩り、目立たせているのは、動物がたてがみやとさかで個体を目立たせているのと何だか似ています。


もちろんまったく逆に、帽子を目深に被って表情を隠すこともできれば、帽子の鍔にちょっと手をかければ挨拶にもなるというコミュニケーションツールでもあるわけです(靴にはちょっと真似のできない技です)


現代は帽子を被らなくなることで、何か旧来の制約を外れ、決まりごとから自由になったのかもしれません。確かに男女を問わずヘアスタイルは自由になりました。しかしそのくらいではないでしょうか。帽子には、粋でクールな表情と、礼儀と節制の象徴という、相反する、得難い魅力が依然として備わっています。

No comments:

Post a Comment