往年の西部劇を現代版で描いた"The Loan Ranger"はいわゆるブロックバスター映画で、夏休みに丁度良い冒険活劇といったところです。少々、ダークな味付けもされていますが、全体としては大人も子供も楽しめる笑えて爽快なアクション映画の趣でした。
主役コンビの一人となる奇妙なインディアンを演じるジョニー・デップは、大ヒットした海賊映画のジャック・スパロウと雰囲気が似たような役だとか、素顔がわからない変なメイキャップで風変わりな主役を演じるのが多すぎるとか、そんな批評も受けているようですが、俳優が「似たような役を続けていて、変わり映えがしない」と苦言を呈されるのは、ややアンフェアな気がします。ひとつには、その役者の長いキャリアを通してみれば実に多様な幅広い役を演じてきていること、もうひとつには、観客に人気を得られる得意なタイプの役を演じてばかりいたとしても、それがその役者の才能を活かす最善の方法であれば、一体何の問題があるのかということです。
ジョニー・デップの映画は数えるほどしか観ていませんが、近年の出演作がステレオタイプだと批判するのが合わないと思われるのは、前者の理由です。変な風貌でおかしな主人公をコミカルに演じるようになるずっと前、ジョニー・デップは"What's Eating Gilbert Grape"に主演していました。この映画はブロックバスターでもアクションでもコメディでもなく、繊細かつ断固とした若者の精神を田舎の家族の中で捉えた、非常に優れたドラマです。その主人公を演じた俳優が、飄々としておかしなインディアンのコメディ・リリーフを演じたのと同じ人物とは俄かに信じがたいほどの違いがあります。俳優が何をもって役を選ぶのか観客には知るよしもありませんが、ともかく「似たような役」に没頭する期間が長いか短いか、キャリアの前半なのか最盛期なのか、それは俳優自身の価値観であり、傍から見ていて判断できるものでもなく、文句をつけるようなものでもないように思います。
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