564 St. Vincent
頑固で偏屈で酒飲みでやさぐれた乱暴者の老人と、芯は強いが大人の事情に醒めた目をした厭世的でひよっこな少年の交流を描く"St. Vincent"、異端な者たちのバディムービーは数多くあり、最初は反発していた2人がお互いの真の価値を知って救われていくといった話はどこかで繰り返し見ているのですが、このテーマに新鮮で優れた脚本と素晴らしい演技者を得て、この映画は新たな名作として力強い魅力を放っています。ある程度展開の見えるヒューマンドラマに、身を乗り出して見いってしまう経験はなかなか普通の映画では味わえません。幼い少年の冷静な、偏見を離れた観察眼と達観したような台詞に、そして厄介者の老人が悪態と無謀の中に見せる善行と誠意と圧倒的な愛情に、そしてその周りの人間達の人の良さ、賢さ、愚かさ、無知、偏見、争いに、ままならない人生のリアリズムと、その中で奇跡のように立ち現れる人間の偉大さと優しさを、思い起こさせてくれます。奇跡といってもお伽話ではなくにがにがしい現実を描き、しかしシニカルな目線ではなく温かいユーモアを持って物語は強く果敢に展開していきます。映画のような感動までは体験できないとしても、実は誰の人生にもこうしたドラマが起きる可能性が添えられているのではないでしょうか?
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