2011-08-16

159 Finding Pixar

ピクサー・アニメーション・スタジオ。ジョージ・ルーカスの下で生まれ、後にスティーブ・ジョブスが買った会社。その生い立ちに違わず、徹底的に面白くインパクトのある映画を作り続けています。

もし自分が7歳や8歳で、ピクサー映画を初めて観るのだったらどんな感じだろうと思わずにはいられませんが、もしそうだったらウッディの玩具を欲しがって終わり、かもしれません。間違いなく、良い映画は対象年齢などなく何歳になろうと面白く観られるのであり、大人であるからこうして感想文も書けるというものです。

実は「ピクサーは子供向け」と遠慮していたのは自分の方でした。ところが数年前「ファインディング・ニモ」を見て、あまりの面白さに認識が一変しました。ニモはとりわけこの季節向けですが、他のいくつかの作品も含めて「何が面白いのか」をご紹介しようと思います。ピクサーの映画を語るのに通り一遍のあらすじだの、見所だのを紹介してもつまらないので、これらはまったく私的な観点で、何が自分にとって最も印象深く、記憶に残ったかという点に的を絞っています。

ファインディング・ニモ  (2003年)

「圧倒的に、ひたすら美しい海景と水と魚」
グレート・バリア・リーフのサンゴ礁から、シドニーの港まで、夕暮の海、朝の海、深海、轟々たる海流、クジラの棲む大洋、そして小奇麗な熱帯魚の水槽の中。ギャグも最高だけれどそれを抜かしてしも、並々ならぬ見事な海の映像だけで十分素晴らしい。おまけに主役は魚。擬人化してあるけれど、リアルな生態系の中で生きる小さな魚。広大な海と魚一匹のコントラスト。

モンスターズ・インク (2001年)

「秀逸なインダストリアル・デザインと企業ドラマ」
モンスターは今日も仕事に出かけ、子供の悲鳴をせっせと集め、それをエネルギー源に平和に暮らす―愉快なよく出来たアイディアをさらに魅力的に見せるのが「モンスター会社」のディテール。エントランスには受付嬢。役員フロアもあれば託児所もロッカールームもあり、新人研修もすればコーヒーも飲む。相棒も宿敵もいるし、企業秘密も陰謀もある。「ドア・ストレージ」のデザインは圧巻。

ウォーリー (2008年)

「洞察とスリルに満ちた近未来SF」
壮大で恐ろしいほどのリアリティを感じる近未来。ポップで美しく楽しげな宇宙の未来世界の陰で”楽園”が静かに人類を終焉に追いやっていくという、ここまでくれば立派なSFサスペンス。健気でクールなロボット達とともに戦い抜いた人類は無事に帰還するけれど。その後の希望も描かれているけれど、突き放したような徹底したドライな視点に呆然。


カールじいさんの空飛ぶ家 (2009年)

「想像を裏切る痛快な古典的ハードボイルド」
老齢の主人公は冒頭は杖をつきつき、階段も降りられず、家から一歩も出ない。彼が亡き妻との約束を誓い旅に出る―というヒューマンドラマは単なる序章。”旅の仲間たち”が増え、ロードムービーに転じてもまだ助走。本当に凄いのは南米の奥地で始まるインディアナ・ジョーンズばりの大活劇。緊張感あふれる敵との対決。派手なのにどこか抑制の効いたクラシックなアクション・ハードボイルド。

映画の”公式”テーマとしては、ファインディング・ニモであれば「父子の絆」、モンスターズ・インクは「友情と正義」、ウォーリーは「恋と冒険と環境問題」、そして空飛ぶ家は「夫婦の永遠の約束」、といった言葉に収まるでしょう。けれども”親子や仲間や恋人や地球環境が大事”というのは、ピクサー映画で、というより、ディズニーの映画ではいわば当然であって(子供たちにはそのメッセージを受け取ってもらえればよいのですが)、その上をゆくプロットの抜群の面白さ、キャラクターの緻密さ、リアルな雰囲気、それにほとんど一瞬も人を飽きさせないギャグとナンセンスの連続、これがおそらくピクサー映画の真骨頂です。

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