577 The Age Of Adaline
事故により29歳のまま不老となった女性、Adalineが世紀を超えて生き続けるファンタジーですが、なによりまず「美しい映画」という表現がしっくりくる作品です。1920年代から40年代、60年代を経て2010年代の現在に至るまで、美しく孤独で、若々しく魅力的でありながら老成し寂びた心を持つ女性。元々の容姿の美しさに加えその複雑な内面性がさらに謎めいた、常人ならぬ雰囲気を纏わせています。不老の身体を生み出すSF的要素は正直なところあまり現実味はなくお伽話に近いものがありますが、そんな設定にもリアリティを与えてしまう主人公の存在感は素晴らしく、波乱の20世紀を黙して静かに生き続けた彼女がいったいこの先どのように生きるのだろうかと、観客を引き込む力を持っています。20世紀初頭に生まれ、29歳まで普通に生きてきた彼女が、その当時のクラシックな上流社会のカルチャーと雰囲気と衣装を常に持ち続け、時代がどう移り変わろうと洗練された古典的美意識と、上品な辛辣さを備えたユーモアにさらに磨きをかけているのはユニークな見所です。永遠に若々しい身体に老練な精神を宿すといえば、恰も人間として無敵な存在、もっといえば人類の夢かもしれませんが、この映画は不老で生きる孤独と悲哀を淡々と描いて見せてくれます。
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