2014-10-30

485 Grace of Monaco


不世出の美しい女優として記憶に残るGrace Kellyのモナコ公妃としての姿を(おそらくは大いに)フィクションを交えて描いた作品が"Grace of Monaco"です。映画の評価自体は賛否両論のようですが、伝記映画の醍醐味はどこまでが真実かそうでないか、似ているか似ていないかの議論ではなく、その人が生きた世界の中で発揮されたその才能と魅力、人間性を辿り、それに共感し、影響を受け、インスパイアされるという疑似体験ができる点にあります。

時代も国籍も遠く離れた過去の人間に後世の人間がこれほどまでに惹かれるのは、失われた宝を惜しむ気持ちではないでしょう。我々は先達の知恵やウィットや勇気や美や言葉や力を知り、それを学び、讃え、感謝し、そして彼らの遺産を借りてさらに人間性を磨く課題を与えられているようなものです。確かに脚本はディズニー映画のハッピーエンドのように行儀が良すぎるかもしれませんが、それこそがGrace Kellyというテーマなのです。実在の人間にインスパイアされたフィクションは伝記映画ではないかもしれませんが、それだけ後世の想像力を掻き立ててやまない圧倒的な存在感を持った女性を思い出させるという点で十分に観る価値があります。

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