Woody Allenの新作はノスタルジックな時代背景と南仏の明るい景観を舞台とした、軽快で愉快なラブコメディです。皮肉屋の男性と溌剌とした若い女性に、ちょっとしたミステリーと沢山のシニカルな会話を語らせる脚本は時にひどく軽いとも見られるようですが、小難しいこともなく観客が気兼ねなく心地よく会話を楽しみ、映画を楽しめるのはやはり熟達した脚本の成せる技です。Woddy Allenのこうしたコメディの面白いところは、のんびりと観ていられる軽妙な話の中に、何かしら少しひっかかるもの、通り一遍でない感情を起こさせるものが紛れている点にあります。
さて、楽しいラブコメディというのはだいたい結末(ハッピーエンド)がわかっており、約束されたゴールに向かってどう進むかの過程が映画の要になります。だいたいにおいて、複数の人間が絡んできて話が混線したり誤解が生じたり、あるいは優柔不断が進展を妨げたりして観客がある程度やきもきできるように作られるものですが、この作品はそうしたドタバタは案外に少なく、本来内面的なものである葛藤を、彼らと彼らの周囲の人間がとにかく終始喋って喋って喋りまくるのが可笑しく、約束されたハッピーエンドへの道程を言語が構築していく様がとてもユニークです。
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