以前、自転車で通勤していたことがあります。快適さや爽快感は言うまでもなく、その頃自分で最も驚いたことは徒歩の時との視点・視野の違いです。自転車とはいえ当然「車」の一種ですから、他の「車」と信号と人の動きはもちろん、道路の状態から風の具合にも気を配り、従って視野はかなり遠くからすぐ近くまで、上下左右に行き来しています。そうやってインプットした情報に従って、安全かつ最も速く進めるルートを選び、また常に偶発的な事故への備えを全身で取っているわけです。
ところが歩行者は(殊に寒い季節には)いきおい足元ばかり見て歩く人が少なくありません。とりわけスマートフォンに熱心な人は足元はおろか手元しか見ていないことになります。確かに徒歩なら下の方ばかり見ていても事故に逢うことはまあめったにないのですが、それでも本当にそれでいいのだろうかと思います。もし広い公園や湖の畔かどこか、考え事でもしながらゆっくり歩くのなら、視界に気を配る必要などないのですが、街中の人ごみを通り抜けようという時には自転車乗りと同じ目線を持っていても差し支えないどころか、多いに歩を助けるだろうと思います。実際試してみれば分かりますが、顔を上げて、道の遠くを見ながら歩いてみれば、人の流れや動線や、誰といつ交差していつぶつかりそうになるか、一目でとは言わないまでも、かなり明瞭に見えてくるのですから。
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