2012-12-31

300 Trouble With The Curve


2012年は大変忙しい年でしたが、「あっという間に」終わった年でもありませんでした。単に慌ただしさの中に過ぎ去る日々ではなく、為さねばならない事柄が多く、責任も大きく、深い判断力と意志の力が試されるような重みを持った日々の積み重ねでした。

しかしそんな忙しい中で、実は映画を沢山観に行った年でした。というより忙しいからこそ映画なのです。限られた暇の中で、1時間でも2時間でも終わる時間がきちんと決まっていて、さっと観に行って、少しの時間思う存分楽しんで、さっと帰れば良い、それが映画です。

昨年のオスカーを席巻した静かでパワフルな"The Artist"や"My Week with Marilyn" "We bought a Zoo"など印象的なドラマから、ウディ・アレンの傑作コメディ "Midnight in Paris"、笑いと静かなドラマがリズミカルに見事に調和した "Intouchables"、タイトなアクション展開が楽しい "Man on the Ledge"、アメコミのブロックバスター "Avengers" や "Amazing Spiderman"、文句なしの痛快アクション "Mission Impossible"から、賛否両論はあるようでしたがスクリーンで観る爽快感を味わえた "John Carter" "Battleship"まで、いささか偏りはあるものの多くの映画を見ることができました。

今年最後に観たのはクリント・イーストウッドが久し振りに主演を務めたドラマ "Trouble With The Curve"です。一言でいえばこれは非常に素晴らしい作品です。老齢で引退も迫られつつある野球の名スカウトの出張旅行に疎遠だった弁護士の娘が突然同行することになり、大きな事件も起きないながらなかなか一筋縄ではいかない親子の対話が始まります。主人公の最大の危機は犯罪との戦いでも西部の決闘でもなく、老齢と頑固さです。しかしそうかといって地味な話ではありません。ラストの展開こそ少々うまく行き過ぎの感もありますが、脚本は非常にリアルで、淡々とした中にも思いがけないシーンやセリフ、月並みでないキャラクターの描き方に目を見張ります。背景となるアメリカの郊外、野球場やホットドッグ、キャッチボールやモーテルの描写がノスタルジックに美しいのも見どころです。

老齢と頑固さという「敵」をいかに克服するかといっても、それは現実には無理な話であって、結局それらを「克服」するわけもなく、しかし絶妙で繊細な心の変化によって、お互いに悩んできた親子はそれぞれ新たな地平を見つけます。どこまでもストレートで、タフさと幸福感に溢れたいまどき珍しい映画です。その気概を老齢をものともせず、強靭な精神性で説得力を持って体現するイーストウッドも素晴らしく、考えてみればハリウッドもシンプルな「善き映画」を作っていた時代があったわけですが、その意気は映画のスタイルが悉く変化した現代でもやはり強烈に求められていると思います。

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